前回までのあらすじ
望遠鏡を用いた天体観測でもっとも面倒で、もっとも重要な「極軸合わせ」の調整作業を自動でやってくれる望遠鏡が発明された。UnistellarのeVscope/eQuinoxシリーズである。eQuinox2を手に入れるところまではよかったのだが、取扱説明書が雑なために、その設定や使用方法でおおいに悩まされることになった。しかし、ネットの情報などに助けられながら、少しずつコツを掴んでいき、ようやく極軸合わせができるようになり、最初の観測First Lightをアルデバランやアルタイルに対して行うことができた。
今回は、いよいよ銀河や星雲などの遠方天体や淡い天体の観測に挑戦である!
「観測モード」に突入!
ダークフレームの取得、そしてバーティノフマスクによる焦点調整(および必要に応じて光軸調整)が完了したら、いよいよ天体観測モードへ突入である。といっても、すでに焦点調整のところで、望遠鏡の「オリエンテーション」は実行してあるので極軸合わせも終了している。また、アルデバランやアルタイルをすでに観測していることも事実。
「いまさら何が観測モード突入か?」と疑問を持ちたいところであるが、まだここで困惑する点がひとつ残っているので、そこを片付けておきたいのである。まずはアプリのホーム画面に戻ってみる。下の図のようになる。

「観測モード」に入るには3つ以上の方法がある。その一つが、画面左側のウィンドウに現れた「My eQuinox2」にある「観察」ボタンを押すことである(細かいことを言うとこれも誤訳だろう。日本語では天体は「観察」するというよりは「観測」するものである)。「観察」ボタンを押すと、望遠鏡が現在向いている夜空の様子がiPadに映し出される。マニュアルで天体を視野に入れたいと思う時は、このルートで観測モードに入るとよい(滅多にやらないだろうが)。
一方で、画面の右下にはM10やM13ヘラクレス座球状星団などといった、観測天体の候補がリストアップされている。これは、観測地点の緯度経度や時間帯に合わせて、望遠鏡のシステムが提案してくる「いまよく見えるおすすめ天体」の候補である。したがって、このリストから天体を選んでやるとその天体を望遠鏡が自動導入してくれる。これが2つめの観測モードへの入り方であり、多くの場合は、このルートを採用することになろう。
しかし、この「おすすめリスト」には載っていない天体を観測したい場合も出てくるだろう。このときは、左上にある「虫眼鏡」のアイコンをクリックして天体名を検索するのである。ネット検索ではなく、望遠鏡のシステムに登録されたデータベースにおける検索である。したがって、登録されていない天体はヒットしない。新星爆発がまもなく起きると期待されている、かんむり座T星は「corona」というキーワードを打つとヒットする。検索結果の中から適切な天体を選んでクリックすると自動導入が始まる。
私はどうやるかわからないのだが、ネットでの検索結果やクイックスタートガイドには「望遠鏡」アイコンが現れていて、そのアイコンをクリックすると観測モードに入るそうである。クイックスタートガイドには「メイン画面にある」というのだが、私がダウンロードしたアプリのメイン画面(ホーム?)にはそのようなアイコンは見当たらない。たぶん、アプリをバージョンアップしたあと、ガイドの方のバージョンアップを忘れているのであろう(多分日本語のバージョンだけ?)が、私が見逃している使用方法もあるかもしれないから、一応このアイコンについてもメモしておく。が、このアイコンのせいで随分困惑した(「私が使っているバージョンでは出てこない」と割り切るまでに、いろいろ試して随分時間を無駄にしてしまった)。

(ver.3.5.0のアプリのホーム画面には存在しない)
この3つ以外にも(もしかしたら)観測モードに入る方法があるかもしれないが、私が知る限りはこれで全部である。
観測モードにおける2つの観測像
観測モードに入ると、デフォルトで「ライブビュー」状態の映像がiPadのスクリーンに映し出される。これは画像素子(CMOS)の性能だけに頼ったリアリタイムの映像で、天体がぼんやりと映る程度の画質である。ある意味「肉眼観測」に近い観測像だと思うが、素子の性能が(たぶん若干は)ましなので肉眼より多少はよくみえるだろう。
しかし、Unistellarの望遠鏡の性能は「ライブビュー」の画像ではなく「エンハンストビジョン」の画像で初めて発揮されると思う。ライブビューは天体探索のための「道具」として用い、天体の位置が決まったら、記録画像として残すのはエンハンストビジョンに切り替えた画像のほうであろう。
エンハンストビジョンというのは、一眼レフカメラでいう「長時間露出撮影」のようなものである。つまり、画像素子にやってきた光子を溜め込んで記録し、暗くぼんやりした天体を明るく輝かせた画像である。一定の露出時間が経過するたびに、iPadに映る画像はアップデートされ、次第に天体は明るくなっていく。その様子を見ながら、5分で記録をしてもよいし、10分まで伸ばしてみても良いだろう。また、たとえば20分の撮影時間の間に途中経過の撮影を何枚でも撮ることができる(望遠鏡の内蔵メモリの容量の範囲内に限るが)。
エンハンストビジョンの起動方法
観測モードに入るとライブビューの画面が映し出され、天体画像の下側に3つの丸いアイコンが出る。真ん中の「光アイコン」がエンハンストビジョンへ移行するためのボタンである(下の図参照)。下の図はNGC6946という銀河(デネブに近いケフェウス座にある)を2分36秒間「露出」したエンハンストビジョン画像である。エンハンストビジョンのボタンを押すとストップウォッチのように時間が刻まれていく。この画像は2分36秒経過した時点で、画面下にある3つアイコンのうち、右側の「カメラアイコン」を押して作成したものである。このように「途中経過」の記録画像を保存することができる。

カメラアイコンを押しても、光アイコンを押さない限り、2分36秒を経過しても「露出」は続く。つまりエンハンストビジョンの状態はさらに続いていく。下の画像は、5分16秒経過したところで、「光アイコン」を押してエンハンストビジョンの観測を終了した際の画像である。このときは(カメラアイコンを押さなくても)画像は自動的に保存される。若干、最初の写真に比べて、淡い部分の構造がはっきりしてきているのがわかるだろう。
この調子で、10分とか20分とか光を溜め込んでいくことで、より鮮明な銀河の画像を記録することが可能となる。(必ずしも画質は露出時間に比例するとは限らないが)。

ちなみに、3つの丸いアイコンのうち、左にある「本アイコン」は、登録天体のリストの表示スイッチである。これを「カタログ」とUnistellarは呼んでいる。
また、その下にある「漢字アイコン」については次のとおりである。まず「操作」ボタンが、手動で望遠鏡の方向を決める操作モードへの切り替え、つぎに「観測」ボタンが、画像に写っている「エンハンストビジョンが操作できるモード」、そして「画質調整」が、まさに画質調整のモードへの移行となっている。画質調整は自動にしておけば初心者には十分である。少し慣れてきたらパラメータをいじって自分の好みの画質にしてみるといいだろう。といっても、パラメータは2つしかないから簡単である。
以上で基本操作の概要はすべて記録できた。残りは、彗星や新発見の新星のような「時間変化天体」の観測方法であるが、それは別の機会に譲ることにする。
観測の例
最後に、観測結果をちょっとだけお見せしよう。どれも定番の天体であり、目新しさはないが、eQuinox2でどれだけのことがやれるのか判断する材料にはなるだろう。

わずか3ー5分の露出で星間物質の漂いがこれだけわかるようになるのは、エンハンストビジョンのお陰である。また、オリオンもスバルも似たような場所にあるとはいえ、ボタン一つでつぎつぎに天体を自動導入してくれるのは、eQuinox2の星図データによる方向探知機能(オリエンテーション設定)の賜物である!
ちなみに、NGC6946は2300万光年なのに対し、オリオン大星雲もスバルもそれぞれ1300光年、450光年と10万光年未満である。10万光年というのは銀河系の直径の大きさであるから、前者NGC6946銀河系の外、オリオン大星雲やスバルは銀河系内部ということになる。銀河系内部の天体は、eQuinox2の視野からはみ出したり一杯一杯に広がってしまって、詳細を見る分にはよいのだが、部分的にしか観測できないのが不満足に感じる。一方で、銀河系の外にある天体はちょうど良い感じのスケールでスクリーンに映し出さられる。木星や天王星も観測してみたが、パッとした写真はとれなかったし、エンハンストビジョンはむしろ邪魔であった(明るくなりすぎてしまう)。
ということで、eQuinox2の本領は、遠方の銀河、特に1000万光年を超えるようなものを観測した時に発揮されるような気がする。ちなみに、アンドロメダ銀河は250万光年の距離であるが、望遠鏡の視野から飛び出してしまってうまく記録できなかった。