複天一流:どんな手を使ってでも問題解決を図るブログ

宮本武蔵の五輪書の教えに従い、どんな手を使ってでも問題解決を図るブログです(特に、科学、数学、工学の問題についてですが)

Unistellarで最初の超新星(後追い)観測

Unistellarの望遠鏡の価値は、1000万光年を超える遠方銀河を気軽に観測できる点にある。目指す銀河を容易に見つけ出し、それなりの画質で観測することが可能だ。超新星爆発や新星爆発のルーティン観測にはもってこいだ。欠点は、エンハンストビジョンでも、ある程度まともな画質にするには15分以上の露出時間がかかってしまうことである。したがって、一晩で観測できる銀河の数は片手、あるいは両手で数える程度が(常識的には)精一杯である。無論、徹夜すればそれなりの数は観測できるだろうが、それでも50個を超すのは無理だろう。

ということで、いくつかの銀河を選び、できる限り頻繁に観測をしている。しかし、銀河ひとつが百年に一度の割合で超新星を発生させるという「平均値」に従っているそうで、それが本当なら発見できるのは何十年も先のことになってしまう....。とはいえ、幸運が訪れることもあるだろうから、コツコツやっている。

日本には有名な超新星ハンターは何人もいて、その中でも飛び抜けているのが山形の板垣さんだろう。直近では11月14日にNGC2146銀河でType-IIの超新星を発見している。その詳細はアストロアーツが報告している。

www.astroarts.co.jp

一年で10個近くの超新星や新星を発見しているということは、毎晩1000個近くの銀河を見続けていることになる!Unistellarでは到底追いつけない水準だ。驚異的であり、尊敬しかない。

しかし、こういうプロのやり方を真似し、その技を盗むのは、職人のみならず科学でも重要なアプローチだ。以前なら、このような「後追い観測」ですらとても大変だった。知らない銀河を見つけるのが至難の技であるし、場所があっていたとしても赤道儀を上手にセットしないとマトモな観測すらできやしない。昨年、板垣さんが見つけたM101のSN2023ixfを後追い観測したときも、本当に大変だった。梅雨時だったので、極軸合わせをやっているうちに雲がかかったり、蒸し暑い中蚊に刺されたりと、とにかく一苦労であった。

Unistellar eQuinoxを購入してから最初の後追い観測になったのが、上述のNGC2146近傍のSN2024abflである。昨年のM101と違って、通常の調整作業を5分程度で終わらせたら、iPadでNGC2146をデータベース検索をしてクリックするだけである。

今回の露出は15分とした。さすがにNGC2146は4200万光年の遠方銀河である。M101と同じ程度の距離であり、これまでだったら「自己最高記録」に相当するような遠方銀河である。多少は我慢しないといけない。待っている間にどんどん画質が上がってくる。さて、超新星は映っているだろうか?

NGC2146のSN2024abfl。

映っていた!超新星は一年ぐらいは光っているはずだから、ひと月毎に観測し続ければ、減光の様子も記録できるだろう。自分で発見できなくても、たくさんの可能性をもたらしてくれるUnistellar eQuinox2は素晴らしい望遠鏡だと感じている。

それにしても、こんな微かな星の点を「新しい星」と見出せる眼力には、ほとほと恐れ入る。今のところは降参だが、こういうトレーニングを繰り返していけば、いずれは自分にもチャンスは巡ってくるだろう。