複天一流:どんな手を使ってでも問題解決を図るブログ

宮本武蔵の五輪書の教えに従い、どんな手を使ってでも問題解決を図るブログです(特に、科学、数学、工学の問題についてですが)

複天一流

 

五輪書二天一流の理由

宮本武蔵は江戸時代の剣術の達人であり、二天一流創始者である(現代の剣道にも引き継がれている)。大小二本の刀を使って攻めるその極意は五輪書に書かれている。

「なぜ二本の刀を使うのか?」という疑問に対しては次のような説明がある。

一命をすつる時は、道具を残さず役にたてたきもの也。道具を役にたてず腰に納めて死する事、本意に有べからず。

NHKのHPには現代文への解訳がある:

命を捨てる時には、使える武具を残さず役に立てたいものである。せっかくの武具を役に立てずに腰に着けたまま死ぬのは不本意である

 

さらにこの文の解説として

命を賭けて戦うのだから「使えるものはすべて使おう」

とある。

現代には様々な道具がある。ソフトウェア、ハードウェア、共に色々である。武蔵は二本であったが、我々にはもっとたくさんの道具が持てるはずである。それを使わずに惨めな人生を送ってこの世を去るのは、まさに不本意である!「複数の道具で流れをなす」ことを目指し、ここに「天一」と名付け、我が身に立ちはだかる問題(といっても数学とか科学の問題だけです)の解決を図る。

このブログでは、そんな困難に立ち向かう我が小抵抗を記録したいと思う次第である。

最初の試み:東京大学2023入試問題(数学[1])

大学入試.....人生に立ちはだかる大きな壁の一つといっていいかもしれない。しかし、その活動の実態は実に「精神的に貧しい」と言わざるを得ない。これを解決したからといって「なにか学びがあった!」と感動したことはあまりないし、入試というものは「得点して合格さえしてしまえばよい。過程や内容はどうでもよいのだ」と考える人は多く、カンニングしたり、答えを盗んだりと、浅ましい手段に出る人が現れたり、予備校や塾に通い「理由はどうでもいい。反射神経で答えよ」みたいなトレーニングを積んだりするものである。

しかし、よくよく見れば、入試問題というのはその大学の研究者たる教授たちが頭をひねって作った科学的なパズルみたいなものである。これを楽しまない手はない。

とはいえ、90分だか120分の間、電卓すら使わず、鉛筆と消しゴムだけを手にとって問題にあたるのは、「どんな手を使ってでも問題解決を図る」という観点からは許されない暴挙である(笑)。科学の問題の解決というのは、そういう修行のようなものではなく、理解できたかどうかなのである。つまり、「合格してしまえばいい」のではなく、「解けてしまえばいい」のである。

さて、最初の問題としてここで考察したいのは、世に難関校を言わしめること長きに渡る、東京大学の数学の入試問題である。その1番は「小手調べ」ということで、比較的簡単だと思われているが、凡人にはこの問題すら手間のかかる問題である。

あたかも「人生で最初で最後の大一番」かと思われるような緊張感のある試験会場で、電卓やコンピュータ、そしてスマートフォンの力を借りずに、制限時間内に自分の頭だけでなんとかしなくてはならないわけだが、我々にしてみれば「そんなのどうでもよい」ということなのである。五輪書曰く、道具を駆使して問題解決を図れ、解けてしまえばそれでいい、のである。

東大合格は諦めたとしても、科学や数学の理解が進む方がもっと崇高なのである(受験的にいうとこういうのは「負け惜しみ」という慣用句がぴったりくるでしょう)。

問題は次のようなものである。

数学入試問題 I-(1)(東京大学2023)

「なんじゃこりゃ?」と思った諸君は我が同胞である。「こんなの置換積分で一発だよ」と思った君達は「来年駒場にて祝杯をあげよ、さらば後ろから叩かれん」である。いずれにせよ、手持ちの全ての道具を使って問題解決を図るのが、我が「複天一流」の極意である。

被積分関数のグラフ(数値計算

まずは積分される関数$f(x)=|\sin(x^2)|$がどんな関数か数値計算して確認しておこう。

$f(x)=\sin(x^2)$のグラフ

積分というのは直感的にいうと「面積」である。区間$R_k$を$[\sqrt{k\pi}:\sqrt{(k+1)\pi}]$で定義すると、上の図では、$k\rightarrow\infty$に対して$R_k$における$f(x)$の積分

\begin{equation}A_k = \int_{R_k}f(x)dx\end{equation}

は次第に減少していくように見える(上図には$A_0, A_1,\cdots A_6$までが色違いで示されている。ただし$A_0$は問題文では定義されていない)。つまり、ぱっと見では積分値$A_k$が減少列に見えるという予想である。

\begin{equation} A_1 > A_2 > \cdots > A_k > \cdots\end{equation}

まずは、これを数値計算して確かめてみよう。

(次回へと続く。)

グラフ描画ツール"Gnuplot"

ちなみに、今回グラフを描くのに利用したのはgnuplotというソフトウェアである。GNU projectと関係していると思っていたが、wikipediaを見返してみると、どうも無関係のようらしい。昔から理系の研究室のUNIXシステムには必ずインストールされていたソフトウェアであり、科学者や技術者で利用している人は結構多いと思う。

今回のグラフ作成における「特記事項」は、積分を表現するために利用した「塗りつぶし機能」である(参考にしたのはこちらのHP)。次のようなコマンドを利用した。

plot [0:1.5*PI] [-0.1:1.2] f(x) lw 3 linecolor "#559933" notitle, 0 dt 3,\
[0:sqrt(PI)]  f(x) with filledc above y=0 fc "gray" notitle

最初の行ではx方向のみならずy方向の描画領域も指定できるので、元になる関数を描いている。2行目(以降)ではx方向のみの描画領域が指定できる(y方向はaboveを使って制御するらしい)が、そこが塗りつぶしの作業を行なっている部分である。