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宮本武蔵の五輪書の教えに従い、どんな手を使ってでも問題解決を図るブログです(特に、科学、数学、工学の問題についてですが)

東大数学2024問題6 (part 10):ケース3とケース4が同時に成立して4つの整数解が見つかる場合

前回のあらすじ

前回は、ケース3.の場合について詳しくみてみた。(a,b)=(-5,7)が候補となったが、$f(2)=2, f(3)=3$だけが題意を満たす場合であることがわかり、4つの素数を見つけるどころか、3つの素数が与えられた式を満たす状況にはなっていないことが確認できた。

ただ、具体例が一つ見つかったことで、何を証明してよいかぼんやりと見えてきた。今回は、ケース3.が2つの素数を生み出す場合、ケース4とは相入れないことを示したい。つまり、ケース3が2つの整数、ケース4が2つの整数をそれぞれ解として与えることで、全体として4つの整数が見つかるということは絶対にない、ことを示したいと思う。

ケース4の状況

この場合は、素数$p$に対し,$x=-p$によって$g(-p)$が素数になる場合に相当する。このとき、$g(-p)=(-p)k(-p) =(-p)(-1)=p$が成り立つ。したがって、条件式は \begin{equation} k(-p) = -1 \rightarrow p^2 -ap + b = -1 \rightarrow p^2-ap + b+1 =0 \end{equation} 解の公式により、 \begin{equation} p=\frac{a\pm\sqrt{a^2-4(b+1)}}{2} \end{equation}

したがって、まずは判別式が正となる条件が得られる。それは \begin{equation} a^2-4(b+1) > 0 \rightarrow b < \frac{a^2}{4}-1 \end{equation} である。

まずはこの条件をケース3が2つの整数を与える条件と重ねてみることにする。 色が濃くなっている場所が該当領域である。前回の考察で(a,b)=(-5,7)が候補となったが、ケース4が複素数になってしまったことを思い出そう。上のグラフでは今回求めた放物線の上の領域に(-5,7)が位置しており、複素数になってしまった理由がはっきりわかる。

上の領域をわかりやすく表示すると、次のようになる。

次に2つの解が両方ともに正となる条件を足す。 \begin{equation} -a < \sqrt{a^2-4(b+1)} < a \end{equation} この条件は$a>0$の時だけ成立する。そのとき、左側の不等式は自明な関係式となるので、右側のみを考慮すると \begin{equation} b > -1 \end{equation} を得る。

すでに$a>0$の条件が見つかった段階で、上のグラフとの共通領域は消滅してしまっている。つまり、ケース3とケース4を組み合わせて、4つの整数解を与えるような(a,b)が存在しないことが証明できた。

考察すべき、残りの状況

となると、考察すべき状況として残ったのは次のような場合である。

  • (a) ケース3が2つの整数解を与え、ケース1とケース2が残りの2つの整数解を与えて4つとなる場合。
  • (b) ケース3が2つの整数解を与え、ケース4が一つの整数解、ケース1あるいはケース2が残りの整数解を与えて4つとなる場合。
  • (c) ケース3をケース4と言い換えた場合の、(a)の場合。
  • (d) ケース3をケース4と言い換えた場合の、(b)の場合。
  • (e) ケース1とケース2が1つずつの整数解を与え(合計2つ)、さらにケース3が一つ、ケース4が一つの解を与える場合。

以上である。