紫金山アトラス彗星は、夕焼けの時間帯から夜の時間帯に移動し、あと少しで天の川に重なるところまできた。
それまで早朝の彗星だったのが、初めて夕方の空に現れたのは10月中旬だった。見つける目印にしたのが、金星とアークトゥルスだった。それから2週間後にもう2度目の観測をしたが、その時が初めてのUnistellar eQuinox2による彗星観測であった。このときは、南斗六星の右隣にある「へびつかい座」という大きな星座を横切っている最中であった。といっても、へびつかい座なんてどこにあるか肉眼ではよくわからないし、eQuinox2を使えば自分で探し出す必要すらない。目印としては役立たなかった(eQuinox2が向いている方角に目をやると微かに肉眼でも見えたが、自力では絶対に無理だろう)。
そして、今、彗星は天の川の岸辺に入って、そのまま夏の大三角の方に向かって進んでいる。宮沢賢治ならお話の一つでも書いてしまいそうな状況である。
しかし、暗い空に彗星が移動したということは、太陽からの距離が離れたことも意味する。彗星の尾は太陽風で吹き飛ばされた彗星の残骸であるから、太陽から遠ざかるほど尾は短くなって写真写りは悪くなっていく。ということで、この彗星観測もそろそろ終わりの時期を迎えつつあるが、夏の大三角に入った姿を見てみたいという欲求は多少ある。たぶん、そこが最後になるような気がする。
昨晩の観測でも尾はだいぶ短くなっていて、eQuinox2のエンハンストビジョンで多少(強引に)長くは見せてくれているが、だんだん「無理」が溜まってきているような気がしないでもない。結果はこんな感じである(ちなみに自分ではレタッチしていない)。
アストロアーツの投稿欄に、画像のデジタル処理をして彗星の内部構造を調べていた写真があった。「すごいな!」と感心した。RGBで分解しており、いつか真似してやってみたいと思っているが、まだ、私の能力ではRGB分解は無理である。しかし、iPhotoの機能を使えば、内部構造を見る真似事くらいはできることに気が付き、やってみることにした。 光量の多少は、おそらく温度の分布と一致しているのではないかと思う。この画像から、3重構造になっているという推測が立つが、どうして3重なのであろうか?固体、液体、気体?だとすると、ちょっとした「発見」ではないか、と一人で悦に浸っている。