複天一流:どんな手を使ってでも問題解決を図るブログ

宮本武蔵の五輪書の教えに従い、どんな手を使ってでも問題解決を図るブログです(特に、科学、数学、工学の問題についてですが)

Unistellar eQuinox2で超新星爆発残骸を観測する

Unistellar eQuinox2の本当の力

いろいろな天体の観測をやってみたが、Unistellar eQuinox2は、遠方銀河、特に1000万光年程度地球から離れた銀河の観測に適しているという感想をもった。もちろん、「近く」(といっても10万光年以内、つまり私たちの銀河系の内部)にあっても、それ相応に「小さな」天体なら視直径が適切なサイズとなって、見栄えのする画像で観測することができた。ということで、やってみないとわからない、というのが結論である。

銀河や星雲の撮影は、やはり長時間露出で撮影しないと綺麗な画像は手に入らない。Googleで検索してヒットしたeVscopeやeQuinoxの画像は、5分とか10分程度の露出時間しかかけておらず、あまり見栄えのよい天体写真にはなっていなかった。(たとえば、大阪市立科学館が発行する「マニュアル」の内容はとても秀逸ではあるが、採用されている天体写真は少しばかり”妥協的”品質である)

購入する前、色々とネットで資料を漁っていたときは「自動導入はすごいけれど、この程度のクオリティの観測しかできないなら、60万円も出して買うのはちょっと馬鹿らしいかも」などと思っていた(その後、Unistellar社の初代スマート望遠鏡であるeVscopeの廉価版、eQuinoxが30-40万円で発売され、「安く」感じてしまった私は迂闊にもeQuinox2を購入してしまった....)。

しかし、自分で色々撮影条件を研究して試してみると、驚くような綺麗な写真が撮れることもあり、考えを改めた。ということで、あまりネットには広まっていない「eQuinox2の力」を極力引き出すように頑張ってみた天体観測の結果を少しずつここで紹介していきたいと思う。

超新星爆発残骸の観測をやってみる

まずは、大阪市立科学館のマニュアルの表紙を飾り、マイナビニュースから派生したTech+というサイトの記事のタイトル画面を飾っている、通称「ダンベル星雲」と呼ばれるM27の観測をやってみよう。M27は超新星爆発の残骸(SNR)である。

Wikipediaによれば、爆発したのは3000-4000年前だというから、紀元前1000年から2000年、つまり地球の文明発祥からしばらく経った頃である。地球からの距離は1300光年だというから、生まれたばかりのイエスキリストの頭上で輝いた星の一つだったかもしれない。

さて、大阪市立科学館の写真では4分、マイナビの記事では2分の露出時間をかけて撮影している。並べてみると、露出時間を長くした方が品質がよくなることが実感できる。

(左)大阪市立科学館4分(右)マイナビTech+の記事2分

左の写真でも十分綺麗かもしれない。しかし、この品質では60万円(あるいは30万円)を出す強い動機とはなり得ない。そこで、私は6分の露出時間とし、macOSの写真.app(昔のiPhotoに相当)で自動処理のレタッチをかけてみた。その結果が下である。

「複点一流」6分

複点一流だけ大きな写真にするのはフェアじゃないだろ、という意見にも応えよう。並ばせてみたのが下の写真である。

(左)複点一流6分(中)大阪市立科学館4分(右)マイナビTech+の記事2分

どうだろうか?このクオリティなら、60万円(eVscope2)あるいは30万円(eQuinox2)を出してまで手に入れたいと感じる強い動機になるかもしれないだろう。英語では、この天体に「りんごの食いかけ」というニックネームを与えているそうだが、それに同意できるのは一番左の画質にのみであろう。

ただし、一つだけ注意点がある。マイナビTech+の撮影はそれほど大都市というわけでもなさそうだが、大阪市立科学館の撮影はおそらく大都市「大阪」で実施されたはずである。Unistellarの望遠鏡は都市の光害を気にせずに観測が可能というキャッチコピーだが、さすがに夜空が澄んでいる場所では背景に映る星々の数がかなり違うようである。私の撮影地は関東周辺の高原であるので、大阪とはわずか2分の違いではあるが、より綺麗に撮影できたのだと思う。マイナビの方は、綺麗な夜空の下であっても、露出時間が短過ぎれば綺麗には撮れないことを示唆していると思う。