Unistellar eQuinox2での観測は続いている
このところ天気の良い日は、夕暮れの時間帯から夜が更けるまで、だいたい3、4時間ほど天体観測をやっている。 といっても、昔のように望遠鏡に張り付いている必要はない。適宜、室内に戻って雑用をしたり、食事を摂ったり、暖房にあたったりと、スマート望遠鏡を使った観測は実に快適である。唯一大変なのは、望遠鏡が観測対象に方向を変える時の1、2分の間だけである。WiFiのレンジが短いので、さすがに室内から制御することはできず、屋外に出て操作が終わるまで待っていなくてはならない。ここが改善された本当に素晴らしい「準自動」天体観測所の完成である。
とはいえ、問題が全くないわけではない。たとえば、これだけ観測を連日続けているとバッテリーは無くなるし、「ストーレージ」と呼ばれる望遠鏡のメモリも乏しくなってくる。また、大量の観測写真データの処理も必要だ。
今回は観測終了後にやらねばならぬことについてのメモ書きであるが、この部分がガイドブックにはほとんど書かれていないのである。ほとほと困って検索すると、Unistellarのweb記事に「なんとなく説明らしきもの」がちょこちょこと出てはくるのだが、系統だっておらず、非常にわかりにくい。ということで、困った内容を、やるべき手順に沿ってまとめてみたいと思う。
観測の終了方法
単に電源ボタンを押す、というのは避けた方が良いらしい。もちろん、それも可能である。しかし、さまざまな方向を向いた望遠鏡は、赤道儀部品が整列しておらず、保管用の箱にしまうためには、望遠鏡を真っ直ぐな状態に戻す必要がある。それを実行してくれるのが「終了する」ボタンと「電源を切る」ボタンの2種である。これはアプリの設定セクションから「My望遠鏡」セクションに移動すると登場する。
三脚に装着した状態で、望遠鏡を真っ直ぐな状態に整えてから電源を切るのが「終了する」ボタンである。通常の観測の終わりではこちらを選ぶ。望遠鏡を(点検や掃除のために)床に置いた状態にして、この「終了ボタン」を押してしまうと、望遠鏡の赤道儀部分が勝手に動き出してしまうので、破損したり色々嫌なことが起きるかもしれないから気をつけよう。
一方で、「電源を切る」ボタンは、単に電源を切るだけである。望遠鏡を真っ直ぐな状態に戻すことはしない。検査点検など、望遠鏡を三脚から外し横たえた状態で電源を入れたり切ったりする必要があるときはこちらのボタンを選んでもいいだろう。保管箱に入れたいと思っているのに、もしこのボタンを押してしまうと、望遠鏡の向きが折れ曲がったまま電源が落ちてしまい、箱にしまえなくなるだろう。再度電源を入れて「終了する」ボタンをやり直すことになる。しかし、この機能はあまり利用しないと思う実際、私は使ったことがない)。直接、指で望遠鏡の電源ボタンを長押ししてしまえば良いからである。
充電の仕方
観測を始めた最初の頃は、お試し観測だったので、せいぜい30分くらいしか望遠鏡を稼働しなかった。しかし、品質の高い観測写真を撮ろうとおもったら、一つの銀河につき20分とか観測時間がかかるようになり、それを6つもやったら2時間である。こんな調子で観測をしていれば、一晩で充電が尽きかけてしまうようになる。説明書には「保管するにはバッテリーレベルを40ー60%以上にしておくべし」と書いてあるし、「20%以下(電池切れ)で使用するな」ともある。これに違反しても、すぐに壊れたりはしないが、バッテリーの寿命が短くなって、修理に送り出すことになるそうである(自分では交換できないらしい)。
このところ、観測が終了する頃になるとバッテリーのレベルは40%程度になっている。放置するのは問題らしいので、観測後には毎晩充電することにしている。40%程度まで減少した場合、リチャージまでの時間は10時間程度、つまり丸々一晩となる。下手すると翌朝になっても充電が100%に復活しておらず、朝食を食べ終わった後あたりでようやく終わるときもある。
充電中は、電源ボタンのLEDランプが青色となり、充電レベルに応じて点滅する。その詳細はネット記事に説明がある。重要な情報なので参考にした方がいいと思うが、問題は点滅が早すぎて、4回だったか5回だったか、すぐには判定できない点である。もう少しゆっくり点滅させるか、色の違いで充電レベルを識別する方法に変更してもらいたいと思う。30分ほどじっと眺めていても、なかなか点滅の回数が減っていかず、最初は絶望的な気分になるだろうが、そのうちに慣れてしまい、電源プラグを差し込んだらさっさと眠ってしまうようになるだろう(笑)。翌日、点滅回数がまだ2回程度のままで、がっくりすることもあるだろうが、忘れた頃に戻ってくると、ぴたっと点滅が終わっていて一安心するはずである。
充電に関しては、もう一つ厄介ごとがある。電源プラグを差し込んだだけでは、充電が始まらないという問題(バグ?)である。「充電中は青いランプで点滅する」と説明にはある。もちろん慣れないうちは「点滅が止まらない」ことに絶望を感じることが多いわけであるが、「点滅すら始まらない」とその絶望はもっと深いものになる。いろいろ試しているうちに、点滅が始まって一安心、という人は多いと思う。しかし、次の日に、また同じ問題が発生して途方に暮れてしまった人もいるだろう。これに関しても、上のネット記事を参照するとよい(ガイドブックに堂々と書いておらず、ネット記事でこっそりお知らせするということは、これはバグだと思う)。
手順は次のとおりである。まず望遠鏡の電源を入れる(単に充電するだけなので、三脚に差し込む必要はない)。電源ボタンが「赤く」なったら(「青い」設定の人もいるだろうから、その場合は「青く」なったら)、電源コードを望遠鏡に差し込み通電させる。そして、電源を切るのである(アプリから切る場合は「電源を切る」ボタンを、指で直接電源を切る場合はスイッチを長押し)。電源が切れた途端に、電源のランプが青くなり、そして点滅が始まる(最初は5回だと思うが、早すぎて数えられないと思う)。これで充電は開始されたことになり、一安心である。
「ストレージ」が満杯になる問題
一晩に6つも7つも天体観測していると、eQuinox2の「ストレージ」と呼ばれる64GバイトのSDカードが2、3日に満杯になってしまう。これに「焦り」と「恐怖」を感じている人も結構多いと思う。
最初に考えるのは、「SDカードの交換」あるいは「増設」であるが、Unistellarはこれを「禁止」しているのである。なにがなんでもSDカードの内容を利用客から吸い上げ、自分の手元にもちたいらしい。この態度に怒りを感じる利用者は世界的にも結構いるようで、あちことのフォーラムで苦情が出ている。しかし、Unistellarはこの点について変更も改善もしていない。したがって、言われたとおりに処理しないとストレージは満杯になってしまう。
さて、Unistellarはどうしろと言っているのかというと、「溜まったデータはアップロードしろ」という。つまり、Unistellarに観測データを全て譲渡せよというのである。満杯となったストレージをなんとかするためには、アップロードしかないというなら、いやいやそうするのが人情というものであろう。私も結局ストレージが95%を超えたところで、軍門に降ったのである。
ところがである!このアップロードに要する時間が、桁外れに長かったのである。一晩中送りっぱなしにしてみたが、95%だったストレージが80%程度に減っただけであった。落胆と恐怖である。いったいいつになったら終わるのだろうか?という底なしの不安である。そしてそのまま1日が過ぎ、夕方となって天体観測の時間になったが、それでも75%を下回らない。
次の不安は、「アップロードを途中でやめていいのだろうか? そして、アップロードが終わっていないのに、次の観測ができるのであろうか?」であった。前者に関しては、検索しても結局答えは得られなかった。後者に関しては次のネット文書が見つかった:「データの保存と記憶:アップロードについて」 この文書を読んで衝撃だったのは次の点である。
「ストレージが100%になっても、望遠鏡の観測は継続して行える」
観測はできても写真が撮れず、保存もできないのではないか?
「観測写真は望遠鏡の中のSDカードには保存していないからご安心を。写真のデータはすぐにiPhoneやiPadに転送されるため、大量の画像データでお困りというならば、それはiPhoneやiPadの記憶容量を増やすことで解決できます。望遠鏡のSDカードの容量とは無関係です。」
「なんだと?!」ってな具合である。
じゃあ、私はなんのために必死になって「ストレージ」の中身とやらをUnistellarに一生懸命アップロードしているのであろうか?
「望遠鏡の性能を改善するためにお客様の情報が必要なんです」
という答えである。なんか嫌ーな感じではあるが、この決まりが嫌ならアップロードなんか無視して観測し続ければよいのである。しかし、ひとつここで問題が発生した。
「もしUnistellarのサイエンスチームに参加して、世界規模の天体観測ネットワークに関与したいなら、かならずアップロードはしてください。ストレージの内容が0%に近い状態にしておかないと、この共同プロジェクトには参加できないからです。」
とのことであった。そういえば、Unistellarの望遠鏡を購入することに決めた「隠れた理由」は、Unistellarが、DARTプロジェクトの観測に成功し、その結果をユーザーとの共著の形で学術論文にして発表したことであった。DARTプロジェクトとは、NASAを中心とした「惑星防御」の最初の試みであり、恐竜を絶滅においやったような巨大隕石が地球に近づいてきた時、人工衛星をぶつけて、地球と隕石の衝突を回避するのが目的である。小惑星にNASAの「神風衛星」がぶつかり爆発が起きた瞬間をUnistellar望遠鏡ネットワークの一つが捉えていたのだった。その様子を捉えた動画はWikipediaやUnistellarのHPから閲覧できる。
「なるほど、この共同プロジェクトに参加するための「踏み絵」がアップロードなんだな」と理解した。それならば仕方ない、という意味である。ということで、アップロードしなくてもeQuinox2を使い続けることはできるが、Unistellarネットワークにいずれ参加することを目標に頑張っているのも確かなので、アップロードはやることにした。
しかし、アップロードにはものすごく時間がかかるので、溜め込まないうちに小まめにアップロードした方がいいだろう。たぶん、その晩の観測が終わったら、電源に繋いでアップロードをするのがいい。なぜかはわからないし、説明はどこにも無いのだが、やってみたらアップロードしている最中でも充電してくれたからだ。
もうひとつ、一か八かでやってみたのが、アップロード中に電源を落とすという試みである。ストレージが95%を超えてしまうと、そのアップロードには2、3日もの時間が要される場合がある(たぶん私のような遅いWiFi接続の場合)。この期間に夜は2回くるので、アップロードを途中で中断しないと次の観測ができないのだ。おそるおそる電源スイッチを長押しして電源を切り、望遠鏡をリブートしてみたら、見事にアップロードは中断されていたのであった。天体観測もいつも通り実施できた。ただし、78%程度にまで減っていたストレージは、この晩の観測の後、再び95%を突破していたのであった....。そして、その晩は、アップロードしながら充電を行ったのである。次の晩は天候がわるかったため、そのままアップロードと充電をやり続けた。そして夜になったところで、確認するとストレージは65%まで減少し、やっと電源の緑ランプの点滅は3回に減少したのであった(この程度の点滅なら数えることができた)。たぶん、あと2晩くらいで完了すると思われる。アップロードはとにかく時間がかかって大変である。
観測写真の保存
さて、ストレージの容量と観測写真の容量自体は直接は関係していないことがわかった。ストレージが満杯でも、観測写真は撮りまくることができるという(まだ実際に試してみたわけではないが)。95%を超えたところまではチャレンジしてみたが、さすがに怖くなって先日はそこで観測をやめてしまった。今度は100%になっても撮影が継続できるか試してみたいものだが、アップロードにこれだけ時間がかかることがわかったので、もうそこまで溜め込まないようにしようと(実は)思っている。ということで、この実験は当分先になりそうである。
とはいえ、iPadの中に観測写真が溜まり続けているのは事実である。誰もが「いずれは画像データをPCやmacに転送したい」と思うのは当然だろう。そこで便利なのがairdropの機能であるが、一枚一枚クリックして転送するのはちょっと面倒だ。そんなときは、Lightningのケーブルを使って直接iPadとmacbookを繋いでしまうと便利だ。写真.appやiPhotoを起動すると、一括転送してくれる。
つい最近、望遠鏡のストレージに蓄えられている「生データ」を直接PCやmacbookにダウンロードできるように、Unistellarアプリが改良された、という話を聞いた。ちなみに「生データ」というのは、おそらく訳し過ぎだと思う。元は「Raw Data」であり、光素子CMOSからの直接信号を加工せずに保存したデータ画像ということだと思う。これは「Raw画像」と書くのがいいんじゃないかと思う。まだ試していないのだが、これを使って観測写真を望遠鏡から直接ダウンロードすると、「アップロード」の量が減って転送時間が劇的に減るそうである。となると「なんだ、やっぱりストレージには観測写真が保存されていたんじゃないか」という感想を持つ。やっぱり100%は越さない方がいいんじゃないかと思い直したところである。
付録:アップロードのランプ信号
ストレージの中に溜め込まれたデータを(Unistellarのサーバーに)アップロードしている最中は、電源のランプが緑色になって点滅すると説明書には書いてある。たしかに点滅が5回とか4回のときはそのとおりだった。LEDランプの色は緑のままであった。しかし、ストレージが60%を切るまで頑張り点滅が3回に減ったところで、点滅の後、赤く光り出したのである。つまり、緑の点滅、しばらく赤、再び緑の点滅、そしてまたしばらく赤、という感じで周期的に色が変わる。途中で色が赤くなるとはどこにも書いてないので、壊れたか?とかなり焦った。しかし、どうやら気にしなくてよいらしい(脱力)。バグなのか、それとも設定が説明書と違うのか、いずれにせよ、Unistellarの開発者のこの緩い感じをなんとか改善してもらいたいものである(怒)。最後に心の声:「いろいろ焦るよ、ほんとに!」と叫びたい気分である。