前回のあらすじ
Unistellar社の自動追尾型反射望遠鏡eQuinox2を購入した。設定マニュアルがよくわからず、天体観測を実施するまでに結構苦労してしまったが、なんとか最初の観測まで漕ぎ着けることができた。今回は、どうやってこの望遠鏡を設定したのか、どのように使うのかについてのメモ書きである。この望遠鏡を購入しようと思っている人や、買っては見たものの使い方がよくわからず困っている人の助けになれば幸いである。
まずは「純正マニュアル」の内容から確認してみる
望遠鏡のパッケージには紙のマニュアルは付属していない。pdf版だけで、ネットからダウンロードする形になる。日本語版はこちらからダウンロードする。私が購入したのはeQuinox2なので、eQuinox/eVscope用のマニュアルをダウンロードした。
ダウンロードできるマニュアルは2種類である。(1)「テクニカルガイド」と(2)「クイックスタートガイド」だ。普通はクイックスタートガイドから読み始めるだろうから、ここでもそうしてみよう。
クイックスタートガイド
最初の数手順においては「室内」で設定できる。つまり星を見ながらの設定はやらなくても済むということである。初めて動かす機械であるから、蚊が飛び交ったり寒さに震える屋外で気合いを入れながら設定する前に、練習も兼ねて快適な室内でいろいろいじってみたいという希望は誰にもあるだろう。今日書き出すのはそんな「室内練習的」な設定が可能な内容である。
さて、最初の「三脚の設置」に関しては問題なく実施できる。ただ、水平合わせに関してはそれほど神経質にならなくてもいいだろう。結局望遠鏡の角度は自動で調整されるからである。大まかにガイドサークルの中に気泡が収まっていれば十分である。要は、鏡筒を組み込んだときに全体のバランスが不安定にならなければよい、というだけの話である。
つぎに「セットアップとスイッチオン」であるが、セットアップは問題ないだろう。もちろん、鏡筒を三脚にきちんとはめ込まないとガタついてしまうから、ここは神経を張る必要がある。よくある失敗は、鏡筒固定用のネジが中途半端の位置にあって鏡筒がきちんと奥まではまらない状態になってしまうことだろう。この状態で望遠鏡の自動調整を行うと、最悪の場合、鏡筒が三脚から脱落して深刻なダメージが発生するかもしれない。そんな恐ろしい状況を避けたいなら、ネジが脱落しない程度に十分に緩めてから鏡筒を垂直に丁寧に差し込むように気を付ける。差し込んだ、と思ったとしても、横から覗いてきちんと望遠鏡が三脚に接続されたかどうか再点検した方が安心だろう。私はなれないときに2度ほど危ない状態に陥ってしまったので深く反省している(脱落はさすがにしなかったが)。
さて、最初に悩んだのは「スイッチオン」である。「長押しして起動」とあるので、その通りにやれば何の問題もないはずなのだが、一点気になってしまうことが発生する可能性がある。これは誰にでも起きるわけではなく、起きる人には起きてしまい、その場合は不安になるかもね、という感じの問題である。
説明書には「長押ししたら起動ボタンが紫色になり、しばらくすると赤色に変わる」とある。たしかに最初はそうだった....しかし、アプリをいじっているうちに、起動色が青色に変わってしまったのである!これは何かのエラーなのだろうか、ソフトウェアのエラーなのか、それとも望遠鏡のシステム自体のエラーなのか?と疑心暗鬼になってしまった。何度やり直しても、「長押しで紫色、その後は青色」の状況は改善されなかったのである。
実は、起動色を赤色にするか、青色にするかは「好みの問題」であって、その選択はアプリ中のとあるセクションで選べるのであった。私は、知らないうちにアプリでこの選択を赤から青に変えていたのであった。その選択は、設定(どうやって入るかは後で説明する)にある「My天体望遠鏡」セクションの下の方にある(下の図)。 ここで誤ってスライドボタンを動かしてしまうと、起動色が赤色から青色へ変わってしまうのである。ただ、色が赤だろうが青だろうが、望遠鏡の機能にはそれほど問題はない。暗闇では赤色の方が「目に優しい」ので赤色を推奨するというだけである。しかし、そもそもeQuinox2はiPadのスクリーンをギラギラに光らせて操作しなくてはならないので、スイッチボタンだけ赤色にしても大してご利益はないと思われる。
まあ、この問題はアプリを下手にいじりさえしなければ発生しないし、少なくとも、最初の起動では絶対に発生しない。その点は安心していいだろう。ただ、少し使い方に慣れてきて、変なふうにアプリの設定をいじってしまったり、あるいは不器用な手さばきにより無意識にオプションが変わってしまったりしたときに、この問題は発生する可能性がある。そのとき、クイックスタートガイドを何度も読み返しても、問題は解決しないのでとても焦る可能性がある。また、テクニカルガイドにもこの起動色の問題については書かれていないから、そちらを細かく読み込んでも問題解決はできない(絶句....)。
クイックスタートガイドでは、スイッチを入れたら「鏡筒のカバーを外せ」と書いてあるのだが、最初の最初にそれをやるのはやめておいた方がよいだろう。なぜなら、eQuinox2はすべての操作をiPad/iPhoneでリモート操作するので、まずは自分のiPad/iPhoneにアプリをインストールしておく必要があるからだ。クイックスタートガイドでは、「カバーを外してから、アプリをインストールせよ」みたいな順番で書いてあるが、普通は「アプリをインストールしてからカバーを外そう」と書くべきだろう。
ということで、我々は鏡筒と三脚を接続して望遠鏡を組み立てたら、カバー(蓋)はそのままにして、操作用のiPad/iPhoneにUnistellarのアプリをインストールする作業に入ることにする(笑)。
アプリのインストール
eQuinox2の観測結果はiPhone/iPadの液晶画面に表示されるので、できれば大きなスクリーンをもっているiPadで操作した方がいいだろう。私はiPhoneの代わりにiPod(販売終了したがその最後の世代のバージョン)とiPadにアプリをインストールしてみた。やはり、iPodで操作するのはきつい。検索するときのソフトウェアキーボードもボタンが細かく打ちにくいし、なによりデザインのレイアウトが途切れてしまうのは見難い。アプリ自体の設計がそもそもiPadを念頭にプログラミングされているような気もしたほどである。
アプリはApple Storeから無料で手に入れることができる。
アプリの起動と初期設定
アプリをダウンロードしたら「アプリを開きたく」なるのはやまやまである。しかし、この後、初期設定で「観測値の緯度と経度を入力せよ」と言われるので、面食らってしまうことになる。そんなもの覚えている人いるわけない。だから、本当はアプリを開く前に緯度と経度のデータをあらかじめ調査しておく必要があるのだ。 もちろん、iOSの「GPSによる位置情報」をそのまま流せば特に問題はないのだが、GPSによる位置情報は個人情報の保護の観点からスイッチオフにしてある人は結構いると思う。GPSのスイッチを入れるのはちょっと嫌だな、と感じる場合には、位置情報をマニュアルで打ち込むことができる。上の図では「手動で入力」とある方のボタンを選び直す。
しかし、緯度と経度はどうやって調べたら良いだろうか?google mapでやる方法があるかもしれないが、「38度42分53秒」といったフォーマットで教えてもらっても、Unistellarのアプリにはこの形式で入力することはできない(私がそのやり方を知らないだけなのかもしれないが)。このアプリでは小数点表示つまり38.2359...という形式を使わねばならない。もちろん、自分で計算して何度何分何秒の形式から小数形式に変換することは可能だろう。しかし、そんな面倒なことはなるべくやりたくない。そこで、国土地理院のサービスを利用することにした。maps.gsi.go.jpである。
国土地理院の地図に入り、観測地点を選び、画面中心にある十字マークと合わせる。このとき、画面の左下にある矢印アイコンをクリックすると、十字マークの緯度経度の情報が表示されるのである。下の例では東京大学のキャンパスにある三四郎池の島を観測場所に選んでみた。
東大の三四郎池は北緯35度42分43.92秒、東経139度45分43.22秒だそうだが、小数表示では35.712201度、139.762005度となる。後者のデータをアプリには入力する。
これで初期設定は終了である。画面が下のように変わって、あたかもすぐに観測できそうな期待を持たせてくれる。が、騙されてはいけない! このままでは、まだダメなのである。すくなくとも、カバーを外してないのだから何も見えるわけないのである(笑)。
とはいえ、ここは「今すぐ観測を開始する」のボタンを押さないわけにはいかないので、挑発にわざと乗ってやることにする(以外に選択肢がない...)。繰り返すが、ここまでは「室内でできる練習のような」設定内容である。まだ望遠鏡を外に運び出す必要はない。
ちなみに、緯度経度の情報を事前に準備するのを忘れ、適当な値を打ち込んでとりあえず初期設定を終わらせてしまった場合は、後で修正することができる。ただ、日本語訳の精度が悪く、「えっ、そのセクションが設定先?」と戸惑う人は多いはずである。かく申す私もなかなか修正が出来ず困ってしまった一人である。答えは
設定メニュー > 夜空の暗さ・広さ設定 > 位置情報
である。2番目の選択が一番困るところであった(まさかそこに位置情報があるとは想像できなかった)。
つづく