12月は忙しいというのは「その通りだな」と身に染みて感じたのだが、正月休みになっても天体観測のデータ整理で忙殺されている毎日である。Unistellar eQuinox2の観測は気軽にできる分、観測の画像データが次々と山積みになり、その整理が大変になるとは予想外であった。前回の記事から少し経って、また一つ超新星の発見があった。Astroartsの記事によると、大野さんという方による初の発見だったそうで、尊敬するとともに羨ましく思う次第である。
さっそく観測してみたが、見事にそして簡単に記録できた(きりん座というよくわからない星座にあるが、カシオペアの隣である)。今回のホスト銀河はNGC2523という「棒渦巻銀河」であった。私たちが住む銀河系(天の川銀河)も、棒渦巻銀河だということだが、自分で観測してきた「近場」の銀河や有名どころの銀河は「非棒」状の、単純渦巻き銀河ばかりだったので、eQuinox2の画像に映ったNGC2523の特異な姿を見て悦に入ってしまった次第である。
ところが、よくよく調べていくと、実は棒状銀河の方がこの宇宙には多く存在するのだという。その数字はまだ観測誤差等のためにかなり幅があるものの、50%ー70%だということだから、過半数は超えているのは明らかのようである(参考文献:arXiv:1304.3529のp.179)。

この論文でもSAとかSBといった記号が多用されているが、銀河の形を分類するための記号だという。これまでの観測結果の調査においてwikipediaなどの参考文献を読んだ際にも、この記号が書いてあったのには気づいていた。が、面倒なので無視してきた。しかし、今度ばかりはこの論文の意味を理解するために、仕方なく定義を調べることになった。
それによると、銀河の形の分類を最初にやったのは、あのハッブルだったそうで、彼の分類方法はハッブル系列と呼ばれているそうである。この形状分類の列と時系列とが強い相関を持っているのではないかと考えていたそうだが、もちろん彼は「あくまで提案、仮説にすぎない」と慎重な態度をとっており、それは彼の(古い)論文にちゃんと書いてあった。とはいえ、この仮説を肯定的に考えていたのは確かで、残念ながらそれは近年の研究により否定されることになったようである。
球形から回転楕円形、そして渦巻型の順番に並べるのがハッブル系列の基本である。そして、これは現在の分類でも採用されている(しかし、時系列とはなっていないという結果になっていて、どうも渦巻型から楕円体へと進化するようである)。ハッブル系列はS0(ソンブレロ銀河のような形)と呼ばれる「臨界形状」で、通常の渦巻型と棒状の渦巻型の2種に分岐する。ハッブルは前者をS, 後者をSBと書いたようだが、現代の天文学では前者をSA, 後者をSBと書いて「バイト数」を揃えたようである。もちろん、Sはスパイラル、Bはバーの頭文字である。
また、SAとSBの中間形が結構あるようで、こういうのはSABと書くそうである。この分類については、まだAIには判定できないのではないだろうか(笑)。
NGC2523で見つかった超新星SN2024aeeeの観測結果はまだ整理中なので、また別の機会に発表することにし、今回はNGC2146で板垣さんが見つけたSN2024abflの続報に集中したい。(いつも興味がずれ、広がってしまうので、データ整理に忙殺される羽目になるのであろう。)
SN2024abflはType-IIの重力崩壊型の超新星爆発であり、Unistellar eQuinox2のおかげで、気軽に連続観測できるようになった最初の「後追い超新星観測」のケースである。「気軽」となると、「光度曲線のようなものを描いてみたい」という強い欲求が出てくるのは、科学者としては当然である。しかし、天体の明るさを分析するには、画像解析のプログラミングを習得しなくてはならず、それはまだ「道半ば」で頓挫している状況である(とはいえ、画像ヘッダーは読めるようになった!)。しかし、プログラミングはいつでもできるが、観測はその時にやらないと永久にできない。ということで、まずはプログラミングは後回しにして、天体観測に注視し、画像データを溜め込むフェーズに現在は入っている、というのが現状報告である。
いくら気軽に観測できるといっても、この寒い季節に15分とか観測するのは、それなりに億劫である。WiFiの電波増幅にはいまだ成功しておらず、肝心な操作は玄関から庭に出てやる必要があり、そのたびに冷たい風が入り込むので、飼い犬に叱られる始末である。この対処がなかなか大変なのである。
ということで、観測はこれまでに4回実施したしたが、天候の問題で画像品質が悪い1枚を捨てることにして、3回の観測をまとめてみる。初回は前回の記事にあったように11月末である。2回目がその翌週で、3回目がクリスマスの頃である。11月15日の発見報告からは、ほぼ2ヶ月になろうとしている。が、画像を見る限り、「全く変化なし」である。これで本当にいいのであろうか?多少不安になってきた。

光度があまりにも変わらないので、コンポジットして写真を綺麗にしてしまったほどである(笑)。

SN2024abflの光度曲線はAAVSOには掲載されていなかった。やはり超新星は「変光星」とは見做されていないようである。検索すると、佐野さんという方の観測結果に辿り着いた。この方も連続観測しているそうであるが、私と違って光度を算出できるノウハウをもっている「セミプロ」の方である。データを拝見すると、やはり光度は一定のままであった。
アメリカのカリフォルニア工科大学所属のパロマー天文台に設置されたZTFプロジェクトの自動観測データにも光度曲線の記録があったが、やはりこれをみても、若干の減光はあるようだが、「まだまだ一定」の明るさをほぼキープしているようである(下の図はそのHPからの引用)。

「変化しない観測データ」というのは、素人的には「つまらない」ものである(私はそういう意味では超素人)。いつ変化するのか、どうしても知りたい。ということで、板垣さんの発見メモにもあったが、SN2024abflのすぐ脇で2018年に爆発したもう一つの超新星2018zdの光度曲線を参考に見てみよう、ということになった。こちらは、ESAのGAIAプロジェクトをまとめたケンブリッジ大学のHPに記録があった。

このデータから見てとれたのは、3ヶ月程度は一定値を保ち4ヶ月目に急に暗くなったようだ、という特徴である。減光のタイミングを見落とさないようにするには、少なくとも2週間おきに観測を継続した方が良さそうである(できれば毎週だろうが、やはりそれはちょっときつい)。