19世紀の初めに発見された70年周期の楕円軌道の彗星、それが今回北半球の空に浮かんでいるPons-Brooks彗星である。 これまで2回挑戦したが、いずれも彗星の位置を確認することができなかった。最初は雲がかかり、2回目は彗星の位置がわからなかった。
しかし、牡羊座と三角座のだいたいの位置がわかってきたこともあり、今回は成功の可能性がだいぶ高まったと感じていた。なにより、雨上がりの青空が終日広がり観測の好機であった。とはいえ、地平線に近い彗星は日に日に夜の空から消えつつある。しかも、この時期は日没がどんどん遅くなっている。もはや6時半でも夕空になってしまっている。これは冬が終わり春が近づいているという意味だから、普通の人には嬉しい変化である。しかし、日没の地平線に浮かぶ彗星を狙うアマチュア天文家には、恨めしい状況なのである。今日失敗すれば「徳俵状態」になるだろう。
木星から牡羊座、そして三角座の先端はあっという間に見つかった。あとは少しずつずらしながら彗星を探すだけである。広角レンズでなんとなくそれらしいものが写ったが、はっきりしない。はっきりさせようと思って、露出時間を長くすると昼間のような青空の写真になってしまう。夕方の地平線間際の天体観測は、残光がとても邪魔である。
しかたないので、しばらく待ってから、今度は望遠レンズで狙ってみることにした。視野が狭くなるので天体の位置がはっきりわかっていないとなかなか天体をレンズの中に入れることができないのだが、局所的に光をたくさん集めたほうが淡い天体は補足しやすいと考え、望遠レンズ使用に踏み切った。
何度か試し撮影をした後、ついにその美しい姿がカメラに映ったのであった!やはり5等星ならばデジタル写真には綺麗に映る。