複天一流:どんな手を使ってでも問題解決を図るブログ

宮本武蔵の五輪書の教えに従い、どんな手を使ってでも問題解決を図るブログです(特に、科学、数学、工学の問題についてですが)

ASUSノートPCをHackintoshにする(part 1): とりあえずUSBメディアからのブートをめざす

今回からしばらくはノートPCをいじってみたいと思う。「5万円以下で購入可能なノートPC」というキーワードでググってみたところ、ASUSのE410KA-EK207WSという絶対に覚えられない型番のノートPCがヒットした。しばらくはプレインストールされたWindows11で利用できるだろう、と思ったのだが、その動作の遅きこと耐え難き。人間の忍耐の限界をはるかに超えているといっていいだろう。そんなこともあって数ヶ月放置状態となっていたのだが、いい加減なんとかしなくてはなるまいと一念奮起し、Hackintoshマシンをつくるための練習台にすることを思いついたのである。

とはいえ、Hackintoshは敷居が高いので、まずはマシンの構造の調査も兼ねて、Linuxマシンにしてみようと思ったのである。

eMMCとはなにか?

仕様書をみたり、Windows11の設定をみると、このASUSノートPCの補助記憶装置としてeMMCが利用されていると書いてある。初めてみる用語である。調べてみるとフラッシュメモリが直接基盤に組み込まれた記憶装置であることがわかった。

www.logitec.co.jp

消費電力が少なく、マシンの小型化に寄与できる一方で、SSDよりは容量も速度も圧倒的に遅いという弱点がある。容量に関しては致命的であり、基本的には外付けやクラウドを使ってデータを保存する使い方になるようである。

今回のASUSマシンのeMMCの容量は128GBであり、手元にある256GBのSDカードの半分である!ということで、eMMCにプレインストールしてあるWindows11はそのままにして、外部のSDカードにLinuxをインストールし、ブートで切り替えて利用できるマシンにすることにした。

BIOSへ入る

ASUSのノートPCのBIOSUEFIに入るためにはF2を押したまま、電源スイッチをピッと押す。電源スイッチは瞬間だけ押し下げるが、F2キーは押したままにする。5秒ほどでUEFIが起動する。

一昔前のBIOSだと起動メディアをあらかじめ選べたのだが、最近のUEFIでは起動可能なドライブが接続されている時に限って自動認識する方式になっているらしい。私のASUSノートPCの場合も、eMMCにインストールされたWin11の起動用イメージファイルが現れるだけであった。空のSDカードをつなげてみたら、外部装置としては認識するが起動イメージが書き込まれていないので、ブートドライブとしては選択できない状態にある。

ASUSノートPCのBIOS/UEFI初期状態(右上の"boot priority"の項目は一つだけで、起動できるのはeMMCのみ)
ASUSのHPには「マシンによっては外付けのUSBドライブからの起動はできない」と書いてあり、果たしてうまくいくかどうか、やってみるまでわからないという状況となった(いろいろ検索してみたが、やってみた人はほとんどいないようで、「人柱」の記録はヒットしなかった)。

起動イメージファイルをもったUSBメディアの作成

以前、VAIOubuntuをインストールした時は、ubuntuのインストール用起動イメージをUniversal USB installer(UUI)というwindowsのアプリを使ってUSBフラッシュメモリに書き込んで、ブートさせた。このソフトウェアのHPはまだ生きていたので、今回も同じ方法でやってみてもよいのだが、あえて違う方法を選び経験値を上げたい。最近ではRufusというブータブルUSBメディア作成ツールが流行っているようでもあるからそれを試してみたいというのもある。

しかし、その前にひとつ思いついたのが、Raspberry PIのインストールを参考にブータブルUSBメディアを作ってみようというアイデアである。SDカードを使ったブートデバイス作成例としてはRaspberry PIほど良い例はないだろうと思う。

ASUSノートPCのUSBソケットは2.0のものが2つ、USB type-Cがひとつである。今回は、macOSで利用しているtype-CのSDカードリーダーを使ってSanDiskの256GB SDカードへの書き込みを試してみたいと思う。

さて、ASUSのマシンにRaspbery PI OSがインストールできるものなのであろうか?とにかくやってみるほかはない。

Raspberry PI Imagerをつかう

Raspberry PI OSのインストールのための第一歩が、Raspberry PI Imagerというアプリによる、ブートイメージのSDカードへの書き込みである。検索して見つけた文書をみると、失敗する例についての注釈がたくさん書かれていてウンザリであるが、「論よりrunである」(注:その昔、N88-BASICというインタープリタで動いていたNECパソコンでは、プログラムを作動させる時にrunコマンドを使っていたことから生まれた「慣用句」である。が、N88-BASICが絶滅した今、死語かもしれない)。とにかくやってみることにする。

macOS(Mojave)にRaspberry PI Imagerをインストールする。まずはdmgファイルをダウンロードしてマウントする。Applicationフォルダーに移せ、というメッセージが出るが、たぶんそのまま起動できるはず、と思ってクリックしてみると、予想通り起動できた。Raspberry PIには様々なハードウェア仕様があり、それに特化したドライバー群がRaspberry PI OSにはあらかじめバンドルされているのであろう。選択肢の中には「通常のPC」というカテゴリーはなく、No filteringという項目を選ぶ。OSをインストールする先のSDカードは認識されているようだ。この条件でインストールを試みたが、あえなく失敗である。

Raspberry PI Imagerの画面から

ハードウェアがRaspberry PIではないのだから、やはりImagerを使ったインストールは無理のようである。このアプリの機能を観察してみたら、単なるダウンロードヘルパーに過ぎないように見える。そこで、直接OSのファイルをダウンロードすべく、Raspberry PIのHPへ向かった。

Raspberry PI OS desktop

最初にRaspberry PI OSをASUSノートPCに載せようと思いついた時は、Raspberry PIのハードウェアに特化したOSを念頭に「チャレンジ」することを覚悟していたのだが、HPに行くとdesktopバージョンのOSが準備されていて、すこし驚いた。同じようなことを考える人が世界にはいるのであろう。少し感心した。

Raspberry PI OS DesktopのHPより
基盤となっているのはLinux DebianディストリビューションのBullseyeバージョンのようだ。ダウンロードしたファイルはiso形式である(2022-07-01-raspios-bullseye-i386.iso)。

最初はWiFiでダウンロードをしようとしていたのだが、どうもかなり時間がかかりそうな気配である。ファイルサイズは3.6GB。そういえば、VAIOubuntuをインストールした時は、有線ネット接続でOSのファイルをダウンロードした記憶が蘇ってきた。

押入れに入れっぱなしの「おもちゃ箱」をゴソゴソやって、Apple純正のUSB2.0接続のEthernetアダプタとEthercableを引っ張り出した。久しぶりに見るEthercableである!これを(これまたアップル純正の)VGAアダプターを利用してUSB type-Cに変換し、macbookに繋ぐ。つぎに、macbookルーターの脇に置き、直接ケーブルでつなぐ。これで多少はダウンロード速度が改善されるであろう。

WiFiでやっていたときは、最初は「20分程度かかるかも」と表示されていたのが、時々通信がストールするにつれて、60分になり、90分になり....と次第に絶望的な値へと変化していった。一方で、有線接続の場合は安定しておおよそ20分前後の見積もりのまま推移した。実際25分未満でダウンロードは終了した。

さて、いよいよisoファイルをクリックして開く段階となった。「おそらく外部ファイルとしてマウントされることであろう。中にはインストール用のアプリがwin/macそれぞれ入っていてインストールは順調にいくはず....」などと楽観的に考えていたのだが、見事にその夢は打ち砕かれたのである。「このメディアはマウントできません」というエラーメッセージが出るばかりである。

どうやら、macOSに付属しているディスクユーティリティではマウントできないらしい。それにしてもおかしい。isoファイルはよくDVDの吸い出しで利用していて、マウントも問題なくできたはずだ。古いisoファイルを探してクリックしてみたが、ちゃんとうまくマウントできた。原因はわからないが、どうも先へ進めない感じである。

いろいろやってみると、The unarchiverというアプリがmacOSにはあるらしく、これでisoが開けることがわかった(たしかこのアプリはRARファイルを解凍したときにダウンロードした記憶が、どこぞの大臣じゃないが、うすうすと蘇ってきた)。isoを展開してみると、中にはsetup.exeというファイルが入っていて、これがインストール用のアプリのようにみえる。とはいえその拡張子はWindows用のアプリである可能性が濃厚だ。一応Raspberry PI desktopのHPには「for PC and Mac」と書いてあるので、「望み薄」とは思いつつもクリックして起動を試みた。しかし、予想どうり駄目であった。

Windows 11へ

ということで、せっかくダウンロードしたファイルだが、Windowsマシンへ移動しなければ「ただのゴミ」状態になってしまった。しかたないので、嫌ではあったが、ASUSをWindows11でブートし、(FAT32でデフォルトフォーマットされた)USB Flash memoryを使ってファイルをコピーすることにした。Windowsに落としたこのisoファイルは、ダブルクリックすると簡単にマウントでき、中身が展開された。さっそくマウントされたドライブへ移動し、期待を胸にsetup.exeを叩いたのだが、「S-modeを破棄しないと許可なしのアプリは動かせませんよ」という内容のエラーメッセージが出た。再びがっかりである。

Windows11がまともに作動していないからこそ、今回Raspberry PI OSをインストールしようと考えたのだ。Windows11なぞ使ったことがなく、どんな形でこのOSが利用されているかなど全く知らないまま生きてきた。「S-modeってなんですか?」ってなもんである。どうやら、macOSiOSのアプリがApp Storeからダウンロードしたものしか作動できないように、最近のWindowsも承認されたストア(microsoft store?)からダウンロードしたアプリしか動かせないように設定されているようであった。

ただし、このSモードと呼ばれる初期状態を破棄すれば、承認されてないアプリも動かすことができるようである。しかし、Sモードは一度破棄すると2度と元に戻せない不可逆過程らしい。えいや!と続行ボタンを押しても、「もう戻れないぞ!それでも先に進みますか?」と念押しの「脅しメッセージ」のようなものが出たりすると、なかなかSモードを捨てる覚悟ができずに困ってしまうのである。実は、このASUSノートPCを購入した直後、噂に聞いていたPowershellで遊ぼうと思って張り切っていたのだが、Sモードの下ではPowershellの起動すら抑止されていたのであった。そしてその際は先ほどの脅しに負けて、powershellの使用を諦めたのであった。)

Windows 11のSモードを破棄した直後の画面

とはいえ、安全なSモードのままでは、使い道のないただのゴミPCになってしまう。この気持ちに押されて、今回は躊躇せずにSモードを破棄したのである。おかげで、初めてpowershellの起動に成功し、その上そのプロンプトからsetup.exeを起動してみることができたのである。プログラムがついに起動し、あるところまで進展した。しかし、この喜びは一瞬で終わった。「ファイルをC:\win32-loader\linuxにコピーできない」というエラーを吐いて死んでしまったのである。どうやら、Windows11になってから、この部分はシステムファイル領域のような形でプロテクトされていて、自由に書き込みすることができないらしい。

こうして、UUIやRufusに頼らずに、Bootable USB mediaを作成する試みはすべて失敗に終わったのである。