GASのプログラミングがひと段落。まだ完成したわけではないが、やり方が固まったので、あとは粛々とコードを書き足せばいいだけ。バグは出ないだろう(というのが、最大の落とし穴になることもあるから油断しないようにしよう笑)。
夏休みの次のプロジェクトとして、梅雨前に購入した20センチの大型望遠鏡Celestron NexStar 8SEの組み立て、およびFirst Light(最初の試験観測)に向けて活動することにした。
2年ほど前から使用しているUnistellarは実に素晴らしい望遠鏡だが、口径が11センチほどしかなく、二重星の分解や土星のカッシーニの間隙あるいは火星の大シルチスなどを見るには能力不足の感がある。やはり大口径の望遠鏡が必要なのである。そこで選択したのが、NexStar 8SEである。一応はモーターが仕組まれており、コンピュータで天体導入と追尾をやってくれる、というので購入を決意した。
Made in USAの望遠鏡で、カセグレン式(一応は反射望遠鏡のカテゴリー)である。鏡筒が大きく、支柱が重い!制御システムは電話線(USB 2.0ですらない)で接続された、独自のコンピュータシステムである!WiFi接続ではないので、電話線の長さの範囲にいないと望遠鏡の制御はできない。そして電話線の長さは、思い切り引っ張っても1m程度である(泣+笑)。ベトナム戦争の映画でよく見かける、通信兵が背中に背負って利用する、あのデカい電話機のようである。UnistellarはMade in Franceで実にオシャレな設計であった(WiFi接続したiPad/iPhoneで制御する)。それに対し、Celestronの望遠鏡はアメリカ陸軍の兵器(かのジャベリン!)のようである(笑)。三脚に乗ったオレンジ色の鏡筒が、もう対戦車バズーカにしか見えない(ちょっと言いすぎたかも)。
やっとの思い出組み立てたCelestron NexStar 8SE
日本代理店はあるが、Unistellarのような国際化には興味がないようで、説明書は英語で書かれている(スペイン語やドイツ語はあるが、日本語がない...)。大きさはインチで、重さはポンドで示されているし、日本時間ではなくアメリカの時間帯になっているし、アメリカの州名と都市名を用いた位置情報の登録となっているなど、いちいち日本人には敷居が高い設定となっている。
インチ、ポンドは仕方ないので慣れることにした。時間帯はUTを用いることができたものの、内蔵システムには時計が組み込まれておらず、スイッチを入れる度に時間を入力する必要がある。つまり日本時間がUTに対し+9であることは暗記しておかないといけない....。時間は秒までとは言わないが、すくなくとも分の単位まで正確に入力しておかないと、極軸合わせ(alignment)に失敗する確率が高まるような気がする。電波時計を持ってきて、その時刻を入力するようにしてからは、Alignment failureの回数が減っていったような気がする....。また、位置情報は緯度と経度を用いて設定することができたので利用した。こちらはなぜかスイッチを切っても記憶してくれるようである(フラッシュメモリなら電源要らないから当然か...リセットの度にこちらの入力も求められていたとしたら気絶していたことだろう笑)。
天体の自動導入は失敗の連続
この望遠鏡は天体を自動導入してくれるが、Unistellarのように「自己判断」はやってくれない(Unistellarの天体導入システムはAIと呼んでもいいほど素晴らしい)。色々な設定法があるが、(マニュアルで)オススメと書いてあったのが「3点法」 である。極軸合わせに使う恒星を自分で3つ決め、それを自分自身で望遠鏡の視野の中心に入れては、制御システムに登録していく方法である。「ある程度」明るければどれでもいい、というが、眼視と手動によって望遠鏡を目標の恒星に向ける必要がある。Unistellarはこの部分が完全自動なので、ひどく劣ったシステムのように感じてしまう。
おそらく典型的な北米の夜空で観測が容易な明るい恒星が数十個システムに登録されているのであろう。3点を指定すれば座標系が定義できるから、それをシステムのリストに登録された恒星全ての組み合わせに対して計算し比較することで、望遠鏡の向きを割り出そうとするアルゴリズムのように思える。
ところが、私の場合、何度試みても「軸合わせ失敗(Alignment failure)」となってしまい(蚊に苦しめられたこともあり)結局諦めることになってしまった。
Unistellarの3次元回転機構は、望遠鏡の設置に関して柔軟性が高く、(ある程度の水平設置は要求されるが)案外雑に設置しても対応してくれ、軸のズレはあまり気にならない(少なくとも天体の導入であまり不満をもったことがない)。ところが、NexStarは望遠鏡(というよりも三脚に乗った台)がかなり正確に水平になっていないと、3次元回転機構が正しく機能しないようなのである。
夜の暗がりで望遠鏡の水平を気にしながら設置するのは、かなり困難な作業だ(特に蚊にまとわりつかれたりすると....)。明るいうちに三脚台だけは(かなりの精度で)水平になるように設置しておく必要があると感じた。水平を出すには、付属の「bubble level」(泡を用いた水平検出機)を利用するのだが、裏面にシールがついていて、あたかも三脚台に貼り付けろ、と言われているように感じるのだが、決して台に張り付けてはならない(笑)。水平器が邪魔になって望遠鏡の取り付けができなくなってしまうからだ(笑)。シールは剥がさず、水平器を利用したら速やかに台から取り除くのが肝要である(笑)。
三脚台に乗せた水平器
ちなみに、Unistellarでは水平器は三脚の中に埋め込まれている(とても便利である!)。
3点法による極軸合わせが失敗したのは、暗がりの中で三脚を蹴飛ばしてしまい、望遠鏡の水平が狂ってしまったのが大きな理由だと思われる(笑)。
もう一つ、失敗した理由があるとすれば、それは3つの恒星の選び方であろう。電池の消耗を抑えるため、望遠鏡のモーターがあまり動かないようにしたいという欲求は誰しも持つであろう。そこで、狭い範囲に明るい星が3つ局在する「夏の大三角」を選ぶことにした。そのうち、デネブとアルタイルを選択した(ベガも利用したかったが、天頂に近く望遠鏡の可動域限界の関係で諦めた)。最後の一つは(さそり座の)アンタレスにした。8月末の夜になると、ほとんど地平線に沈む直前のような感じではあるが、他に目立つ星がなかったので、そうした。結構上手に3つの恒星を導入したと思うのだが、結果は"Alignment failure"であった。
後で説明書(instruction manual)を読み返してみると、2つ目の天体は1つ目の天体からなるべく離れた位置のものを選んで欲しい、とのことであった。計算精度の問題であろうか?一つ目をアンタレスにし、2つ目をデネブにするべきだったか?そして3つ目をアルタイルにしたらもう少し成功の可能性はあがったかもしれない。ただ、アルタイルとデネブは近いので結局はエラーになってしまったかもしれない。とにかく極軸設定は(Unistellarに比べて)難しいのである。もしベガが利用できればうまくいっただろうか?しかし、夏の大三角が西の空に傾き始めるのは晩秋以降である。それまでは別の恒星を利用せざるを得ない。ペガサスの恒星とか、ミラとかが候補になるだろうが、「あまり明るくない」のが問題だ。本当は北極星を使いたかったのだが、この夜は雲に隠れていて利用できなかった。
次に試したのが2点法 である。この場合は、どんな恒星でも良い、というわけではなく、リストから恒星を選んだ上で望遠鏡にその方向を登録するのである。たとえば、まずはコンピュータでAltair(アルタイル)を選んだ上で、望遠鏡にアルタイルを手動で導入する。次に、デネブをリストから選び、その後でデネブに望遠鏡を向けて登録する、といった方法である。この手法に関しては"Alignment success"となったのだが、実際にアルビレオを自動導入させてみると、望遠鏡がとんでもない方角(間抜けな方角)に向いてしまい、アルビレオどころの話ではなくなってしまった(笑)。結局は「失敗」である。
最後の砦が1点法 である。これは合わせた天体だけを追尾するときに利用できそうである。今日は明るい月が出ているわけだから、月を使って極軸合わせをやってみることにした。これはなんなく成功(笑)。制御装置で「月」を選んでから、望遠鏡を手動で月に向け、「登録」するだけである。"Alignment Success"となり、月の追尾が始まった....が30秒ほど経過すると、月が微妙に視野から外れていく。やはりどこかがずれていたのであろう(たぶん水平の設定だと思う)。とはいえ、ある程度の観測はできたので、デジタル記録を行ってみた。
月の北極方面の地形
ガッサンディが見えたが、今回は虹の入江の向こう側、つまり北極地方の地形に着目してみた。満月の直前で月面観測をやったことがなかったので、面白いクレーターがいくつか目に留まったのだ。
BabbageとAnaximanderクレーター
2つの大きめのクレーターがあり、外輪山のような大きめのクレーターの中に、小さな円形クレーターが囲まれているのが特徴的だ。阿蘇山の外輪山からカルデラ地形を見た時の感動は今でも覚えている。壮観であった!きっと、このクレーターの「外輪山」からの眺めも絶景であろう。
ハートマークが横向きになった形の外輪クレーターの縁に、小さなクレーターが(ハートの凸みに)位置しているのがアナクシマンドロスである。凸みにあるのはカーペンタークレーターである。凹みにもクレーターがあるように見えるが、こちらの写真 をみると山脈の断崖が見えているだけらしい(参考文献はこちら )。
一方、同心円上の外輪+内輪クレーター構造をもっているのがバベッジクレーター )である。
アナクシマンドロスとバベッジクレーターの間には、ピタゴラスクレーターという大きな円形クレーターがあるのだが、暗闇(夜側)にはみ出していて、この写真では識別不能である。翌日(つまり今日)に観測すれば見えるようになっているとは思うのだが、あいにくの雷雨で観測はできなかった(残念)。
まとめと反省
Celestron NexStar 8SEでのFirst lightをついに成し遂げた!うんざりする設定作業や面倒な組み立て作業を乗り越え、なんとかたどり着いた気分である。一度使い方が判明してしまえば、心の壁が低くなるので、観測に集中できるようになる。しかし、極軸合わせの問題が燻っているので、我が気分はまだまだ「日本晴れ」という状態とはなっていない。台風のせいで、これから1、2週間は天気が悪いそうだから、次の観測は9月に入ってからになりそうだ。貧乏ゆすり状態である(笑)。
今回の撮影には、Canon EOS M1を利用した。望遠鏡への接続には、昔購入したCelestron Zoomレンズを利用した。金環食の観測のときに、必死で買い揃えた部品の数々で、なんとかEOS M1が利用ができる。しかし、部品管理を怠ったつけで埃だらけとなっていたため、画質に問題があることがわかり落胆した。クリーニングを行ったが、果たして改善なるか。そもそもZoomレンズの性能が悪く、画像の品質が上がらず、見返してもあまり嬉しくない。
そこで、ZWOのCCDカメラを導入することを考えている。動画で撮影し、スタック処理すれば、かなりの画質が期待できるはずだ。いずれは、土星のカッシーニ間隙、木星の大赤斑、そして火星の大シルチスなどを観測するわけだから、スタック処理については予習しておいた方がいいだろう。ということで、そちらの研究も始めることにした。