複天一流:どんな手を使ってでも問題解決を図るブログ

宮本武蔵の五輪書の教えに従い、どんな手を使ってでも問題解決を図るブログです(特に、科学、数学、工学の問題についてですが)

失われた対数の性質 (part 3): 2つのパラメータの入り方

前回のあらすじ

対数関数にパラメーターを入れる二つの方法が試験問題で提示された。割り算式と足し算式である。 パラメータを動かした時に、どのような関数列ができるのかその傾向を調べてみよ、というのが この問題のポイントである。くりこみ群によく似た内容であるが、相転移が起きるわけではないから 安心していい(笑)。

前回は一般的な性質を確認したので、今回は具体的にどんな関数列が生成されるか見てみたい。

$y=\log_k x$の系列

まずは、このパラメータの入り方について、「私でも」わかりやすいように書き直す。 すなわち全てを自然対数の形で書き直す。 \begin{equation} y=\log_k x = \frac{\log x}{\log k}. \end{equation} 問題では$k=2,3,4$の3つだけのケースを検討するように指示されているが、 一般化してもそれほど難しくないだろう。

割り算(掛け算)でもっとも大事な数は1である。 1より小さいか大きいかによって割り算のタイプが二つに分かれるからである。 特別な場合は1に一致した場合であり、ここが大小関係の「境界」に相当する。 だから1という数字が割り算では重要なのである。

一方、引き算(足し算)でもっとも大事な数は0である。 正負を分ける境界が0だからである。正負は大小関係を表すこともできるし、向きを表すこともできるし、 様々な解釈が可能である。

$y=\log_k x$の分析に関しては「割り算」が重要となるので、 1という数字がどこで発生するか考えるのが大事である。 ただし、関数自体ではなく、底eの自然対数の形をもつパラメータ$\log k$の値が1となる場所で、 それは$k=e$の場合である。したがって、 \begin{equation} 1 < 2 < e < 3 < \cdots \end{equation} の関係から \begin{equation} 0 < \log 2 < 1 < \log 3 < \cdots \end{equation} となり、その逆数は \begin{equation} \frac{1}{\log 2} > 1 > \frac{1}{\log 3} > \cdots > 0 \end{equation} となる。したがって、$\log 2$と$\log 3$の逆数のところに「界」があることがわかる。

この結果を踏まえると、$\log_k x$は、$k=2$のとき自然対数$\log x$より「大きくなり」、$k=3,4,\cdots$のときは自然対数より小さくなる、つまり、 \begin{equation} \log_2 x > \log x > \log_3 x > \cdots > 0 \end{equation} ではないかと結論づけたくなる。しかし注意しなくてはいけいないのは、不等式の関係は両辺に共通の正の数をかけた場合と、負の数をかけた場合で関係が逆転する点である。つまり、上の関係が成り立つのは、$\log x>0$、つまり$x>1$の場合に限られるということである。$\log x <0$、つまり$0<x<1$の場合は、パラメータの逆数の不等関係が反転するので \begin{equation} \frac{\log x}{\log 2} < \log x < \frac{\log x}{\log 3} < \cdots < 0 \end{equation} となる。したがって、 \begin{equation} \log_2 x < \log x < \log_3 x < \cdots 0 \end{equation} となるのである。

この大小関係は$x=1$の場合が境界であり、すでにみた通り、その場合すべての系列は$\log_k x = 0$となり、一点で交差する。gnuplotでグラフを描いてみよう。

ということで、試験問題中の答えとしては(0)となる。

$y=\log_2(kx)$系列の場合

自然対数で書き直してもいいのだが、ここはあまりその必要はないだろう。まずは「掛け算は足し算となる対数」の特徴を再確認する \begin{equation} y=\log_2(kx)=\log_2 x + \log_2 k \end{equation} これは$y=\log_2 x$をy軸方向に$\log_2 k$だけ平行移動したグラフに他ならない。$\log_2 k=\log k /\log 2$は$k$について単調増加関数であるから, $k$が増加するごとに$y=\log_2 x$のグラフがy軸正方向にずれていくイメージである。ちなみに$\log_2 2 =1, \log_2 4=2$であるから、ずれ幅がおおよそわかる。

実際にグラフを描画して考察結果を確認しておこう。

試験問題の答えは(5)である。