前回のあらすじ
星型図形$A B C D E$の内部の5つの交点$P Q S T R$が同一の円の周上に乗っかっている状況を分析してきたが、この条件により自由度$(S,\phi)$が固定され \begin{equation} S=5\sqrt{5}, \quad \phi = \tan^{-1}\left(\frac{\sqrt{11}}{3}\right) \end{equation} となることがわかった。この条件の下、さらに今回は分析が進む。
A,B,Cを通る円の方程式
今回は、A,B,Cが(P,Q,R,S,Tが乗っている円とは)別の円の周上に乗っているという条件が与えられている。この円の方程式を \begin{equation} (x-x_1)^2 + (y-y_1)^2 = r_1^2 \end{equation} と書くことにする。三つの点 \begin{equation} A(0,5), \ C(0,-3), \ B\left(-\frac{3\sqrt{11}}{2},-\frac{3}{2}\right) \end{equation} を円の方程式に代入し、その連立方程式を解くと、 \begin{equation} x_1=-\frac{3}{\sqrt{11}}, \quad y_1=1, \quad r_1=\sqrt{\frac{185}{11}} \end{equation} という結果が得られる。ここまでは前回とまったく同じ方法の繰り返しである。
点Dの場所はどこか?
この問題では、点Dがこの円の内部にあるのか、外部にあるのか、あるいは特殊な例として円周上に乗るのか判定するのが最終目標である。我々のデカルトアプーロチの場合、この答えは既に出ているので、確認してしまおう。自由度が固定されているので、Dの座標は \begin{equation} D\left(\frac{5\sqrt{11}}{2}, -\frac{5}{2}\right) \end{equation} で与えられる。この値を円の座標の左辺に代入した時の値が、半径の2乗より大きければ(小さければ)外部(内部)にあるという判定になる。もし半径と一致すれば、Dは円周上に乗っていることになる。答えは外部であることは、シミュレーターを持っている我々にはバレバレであるが、一応確認しておこう。 \begin{equation} \left(\frac{55}{2\sqrt{11}}+\frac{3}{\sqrt{11}}\right)^2 + \left(-\frac{5}{2}-1\right)^2 =\frac{1}{11}\left(\frac{55+6}{2}\right)^2+\left(\frac{7}{2}\right)^2 \end{equation} したがって、 \begin{equation} \frac{1}{11}\left(\frac{\left(61\right)^2+7^2\cdot 11}{4}\right) =\frac{1065}{11}> \frac{185}{11} \end{equation} となって、予想通りDは円の外部にあることが確認できた。つまりシの答えは”(2)外部”である。ということは、$XQ < D Q$であることもわかってしまう。なぜならQ,X,Dは直線上に並んでいて、Qから見てXまでが円の内部領域に属するからである。Qが(我々の座標系では)原点なので、BQとDQの長さとはBとDの座標からすぐに計算できてしまい、それぞれ$B Q=3\sqrt{3}$, $D Q=5\sqrt{3}$である。したがって、 \begin{equation} B Q\cdot D Q = 45 \end{equation} である。$AC\cdot C Q =15 < B Q\cdot D Q = 45$であることは自明である。
最後にXQの長さを計算する必要があるが、これは「方べきの定理」の第二パターン(二つの直線が円の内部で交差するタイプ)によって解くのが出題者の意図のようである。この定理を知っていれば、$A Q\cdot C Q = B Q\cdot X Q$であることはすぐにわかるが、知らない人はデカルトアプローチによってXの座標を計算してしまえばよい(ここでは省略する)。
方べきの定理の第二パターンの証明も、以前やったように極座標を利用すると簡単に手に入る。 しかし、$X Q<D Q$の結果がわかっているので、これを逆に辿ることで$A Q\cdot C Q = B Q\cdot X Q$という結果は案外簡単にわかるであろう。
設問(iii)は省略
ここまでくると、設問(iii)はこれまでの同じ方法論を繰り返すだけなので、「つまらない問題」でしかない。ということで省略する(あとはAIに任せる、と言いたいところである)。
ということで、2024年の共通テスト数I,Aで出題された幾何学の問題は以上で完了である。