複天一流:どんな手を使ってでも問題解決を図るブログ

宮本武蔵の五輪書の教えに従い、どんな手を使ってでも問題解決を図るブログです(特に、科学、数学、工学の問題についてですが)

失われた対数の性質(part 2): 対数の基本性質

前回のあらすじ

共通テスト2024 数学II.Bで出題された対数関数の問題を分析し始めたわけだが、対数関数の難しさのようなものを気づかせてくれる、なかなか良い問題であることがわかった。古代ローマ時代のことわざに「人間は間違える存在である」というものがある。そしてなにより、人間は「失敗から学ぶ」。ということで、今回は対数関数の基本的性質を再度勉強するよい機会と捉え、いろいろな考察をしてみよう。

底に依らない定数値

まずは底$k$がどんな値であっても、必ず同じ値(定数)をとるような$(x,y)$の組を見つけるという問に取り組んでみよう。ただし、$x,y$は底$k$の対数関数によって関連づけられている。 \begin{equation} y=\log_k x \end{equation} 前回に取り上げた「基本」を適用してみよう。つまり、対数関数になれるために、まずは指数関数に戻してみるというアプローチである。指数関数と対数関数は逆関数の関係にあるので、 \begin{equation} \text{k}^y=x \end{equation} となる。ここに$k$nに依存しない定数$(x,y)=(C,D)$があると仮定して、上の式に代入してしまおう。つまり、 \begin{equation} \text{k}^D=C \end{equation} どんな$k$でもこの定数は不変だというので、$k'\ne k$に対しても \begin{equation} \text{k'}^D=C \end{equation} が成り立つはずである。したがって、$k$と$k'$の式の辺辺を割り算すると \begin{equation} \left(\frac{k}{k'}\right)^D = 1 \end{equation} となるが、この両辺の自然対数をとると \begin{equation} D\log\frac{k}{k'}=0 \end{equation} である。 \begin{equation} \log\frac{k}{k'}=\log k - \log k' \ne 0 \quad (k\ne k') \end{equation} なので、$k,k'$の値に関わらず、上式が常に成り立つには$D=0$でなくてはなならない。また、この結果を最初の式に代入すると$C=1$であることもわかる。

つまり、どんな底をもつ対数関数であっても、そのグラフは必ず$(1,0)$という定点を必ず通過するということである。これは後の問題に対する伏線になっている。

パラメータ$k$による2つの対数関数の表現

次は、パラメータ$k$を2つの入れ方で対数関数に持たせた場合の考察である。一つは \begin{equation} f_k(x)=\log_k x \end{equation} であり、もう一つが \begin{equation} g_k(x)=\log_2(kx) \end{equation} である。

前者は割り算、後者は足し算と関係していることがわかる。

「割り算」の場合

まずは「割り算」の場合を考える。これは先に考察したケースと同じ場合である。基本である「指数関数への回帰作戦」を実施しよう。 $f_k(x)=y$とおくと、すでに見たように \begin{equation} k^y = x \end{equation} である。両辺の自然対数をとると \begin{equation} y\log k = \log x \end{equation} すなわち \begin{equation} y=\frac{\log x}{\log k} \end{equation} となって「割り算」のケースであることが確認できる。つまり、この場合のパラメータの入り方は「割り算」形式なのである。

「足し算」の場合

次は「足し算」の場合である。同じように「指数関数への回帰作戦」を実施すると、 $y=g_k(x)$に対して、 \begin{equation} 2^{y} = kx \end{equation} である。この問題ではちょっと非自明な変換が必要である。それは \begin{equation} k= 2^{\log_2 k} \end{equation} である。この式の両辺に対して、底2の対数をとってみれば恒等式であることが確認できるだろう。この恒等式は、大学の物理などでは意外によく登場するので、一応頭に入れておいても無駄ではないと思う(たとえば、放射能物質の半減期と崩壊寿命の間の関係式など)。この恒等式を使うと、上式は \begin{equation} 2^y = 2^{\log_2 k}2^{\log_2 x}=2^{\log_2 k + \log_2 x} \end{equation} となるので、 \begin{equation} y=\log_2 k + \log_2 x \end{equation} という関係式が手に入る。大事なことは、指数関数では「掛け算」が「足し算」になるという性質があるということだ。逆関数である対数も、足し算が掛け算になる、という性質を受け継いでいる。

上の式は、$g_k(x)$のパラメータの入り方は「足し算」であることを意味している。

次回は、今回考察した結果を用いて、実際の問題を解いてみることにする。